回答
バスカヴィルの犬ですね。
シャーロックは基地内で研究員ステープルトンに案内されながら、彼女が見せる「遺伝子実験動物」の説明に不審を感じます。
そして、唐突に「That’s it(もう十分だ)」と言い残して退室に向かいます。
その直後のセリフが 「It’s this way, isn’t it?」 ですね。
このItは、「意味のない形式主語の it」ではなく、
具体的に 「this way(この方向)」 を指す、指示的な it(=代名詞) です。
▼文の構造について
It’s this way, isn’t it? は、構造的に次のように分解できます:
> It + is + this way
→ここでの It は 主語、this way は 補語(=主語の内容を説明する部分) です。
つまり直訳すると。
「それ(it)は、この方向だね?」
→(意訳)「こっちの方向ですよね?」となります。
▼「It」 の種類の分類
ご存知かと思いますが、英語の it は文法上、いくつかの使われ方があります。
(A) 形式主語(dummy it)
実際の主語が後ろに来る:It’s raining. / It’s difficult to say.
(B) 形式目的語
実際の目的語が後ろに来る:I find it strange that he left.
(C) 指示代名詞としての it
既出の事物や状況を指す:Where’s the door? → It’s this way.
(D) 時間・距離・天候の it
文全体を形式的に支える主語:It’s 8 o’clock. / It’s cold. / It’s far from here.
このうち、「It’s this way」の it は明らかに (C) 指示代名詞の it にあたります。
つまり、「出口や通路など、いま話している場所や方向を指す代名詞」ですね。
このセリフの直前で、シャーロックたちは廊下を歩いて研究室から出ようとしています。
したがって 「It’s this way」 は、
「(出口や廊下は)こっちですよね?」という 空間指示 の意味です。
もしこの it が「形式主語」だったら、文全体の意味が崩れてしまいます。
「こっちの方向だ(=行くべき道)」という、物理的な「それ」を示している点がポイントです。
で、ここまでが文法的な説明です。
そのうえで、文脈的な説明を補足すると。。。
▼皮肉・挑発のトーン
この時点でシャーロックは、ステープルトンの説明に何か隠し事があると気づいており、「これ以上聞くまでもない」と判断して場を切り上げています。
そのため 「It’s this way, isn’t it?」 は、単なる道の確認というよりも、
「もう出て行くから、案内なんて要らないだろう」という皮肉めいた軽口になっています。
▼思考の切り替えサイン
シャーロックは観察から一気に新しい推理の段階に入るとき、しばしばこのような「軽い一言」を挟みます。
これは視聴者にとって「彼の頭が動き始めた」ことを示す演出上の合図でもあります。
つまり、「It’s this way, isn’t it?」 は、「もうここで得る情報は十分だ。次の手に移る」という内的モノローグの代わりも意味しています。
