この英文において、時制の一致はなぜ適用されないの?
例文
I don't think he realized how tough the job was going to be.
彼はどんなにこの仕事が厳しいものになるのか気づいていなかったと思うな。
こういう文章の場合、確か「時制の一致」というものがあって、動詞の時制が統一されるんだったと思うのですが、なぜこの文章では don't と realized と was で、時制が混在しているのでしょうか?
日本語訳からみると「思うな(ぁ)」は現在、彼が「気づいていなかった」は過去、仕事が「厳しいものになる」は・・・現在?(もしかして、ここでrealize との時制の一致が起こってwas になっている?)ですが。
全部、過去形に統一されたり、現在形に統一されたりするのものではないのですか?
時制の一致のルールが、よくわかりません。
回答
時制の一致は、「主節が過去形のときに気をつける」と、ご理解いただけたと思います。その上で、説明を補足させてください。
I knew Greg liked apples.
これは過去形ですが、話の流れによっては、日本語の「そうだったね」のように、現在についての会話中でも使えます。
John: Greg always carries a few apples in his backpack.
Amanda: I knew Greg liked apples!
上の会話では、アマンダが「I knew 知っていた」と過去形を使っていますが、話の内容は現在です。「I know 知っている」というと、「そんなの知っているよ」のように、少々ぶっきらぼうに聞こえてしまうかも知れないからです。日本語の「そうだったね」のような意味で「I knew」を使っています。
このように、現在の話でも過去形を使うことがあって、そのときに時制の一致を忘れて「I knew Greg likes…」としてしまいやすいです。アメリカ人も、たまに間違います。
時制とは話が外れますが、気になったことが2点あります。
(A)
ご質問の文は「気づいていなかったと思うな」ではなく、「気づいていたとは思わないな」という日本語訳であってほしかったと思います。
日本語訳の表現に惑わされないよう注意することが、本当に大切です。英語と日本語は大きく異なる言語なので、翻訳は単純ではありません。英語の一字一句を直訳するのではなく、自然な日本語になるように、言葉を選びます。
そのため、日本語の訳を読んで、英語と見比べながら意味を理解する習慣がついていると、英語の発想が身に付きません。
ご質問の文を実際に使うとき、「not の前倒し」とは考えることはありません。「not の意味はここではなく、後ろの動詞にかかる」などということは、頭の片隅にもありません。
これは英語を学習する上で、エネルギーの無駄であり、誤解を招く要因になると、私は思います。
英語の発想を、あえて日本語で書くと、
「私は思わない。彼が気がついていたとは。仕事がどんなにきつくなるかを。」
のようになります。この順序で、言葉を思い浮かべます。
この発想を身に付けるには、出来るだけ英語は英語で理解するようにし、日本語には訳さないようにすることが大切です。なぜか日本人は、すぐに翻訳したがる癖があります。実際に英語を話すとき、聞くときに、訳している時間はありません。書くとき、読むときも同様で、英語だけを頭に浮かべます。そういう訓練が必要です。
(B)
「how tough the job was going to be」は、過去進行形ではありません。過去から見た未来です。「be going to」は、「will」と似たような未来形です。
His job is going to be tough.
His job will be tough.
上の二文によると、彼の仕事は、今はきつくありませんが、未来のある時点に、きつくなります。
His job was going to be tough.
His job would be tough.
上の二文によると、話者が言及している過去の時点において、彼の仕事はきつくありません。その後にきつくなります。
回答ありがとうございます。
段階を追っての(4)の説明が大変わかりやすくて、ありがたいです。
いつも例文まで作っていただいて、恐縮です。
>(4)
>I know Greg loved apples when he was little.
>これは主節「I know」が現在形です。「know」と 「Greg …」の間に、時制の一致は生まれません。
>グレッグの過去のことを、私は今、知っているということで、論理的に何の問題もありません。
I don't think he realized how tough the job was going to be.
彼はどんなにこの仕事が厳しいものになるのか気づいていなかったと思うな。
I don't think は、「思うな(ぁ)」なので、現在形。
(いわゆる「not の前倒し」であり、not の意味はここではなく、後ろの動詞にかかる。)
he realized は、「気づいていなかった」なので、過去形。
(「not の前倒し」による、not の意味はここにかかる。)
the job was going to be の部分は、与えられた日本語訳が「仕事が厳しいものになる」なので、現在だと誤解しそうになるが、これは「仕事が厳しい状態が続いていた」ということなので、過去進行形がピッタリ。
(この日本語訳から、正しい英文の時制を選ぶのが難しいですね。)
こう考えると、「時制の一致」のルールにあわせて、後ろの動詞の時制を変える・・・とか考えなくても、そのまま正しい英文になりますね。
そして、I don't think の現在形は、後ろの2つと時制が一致しなくても、文法的には何の問題もない、と。
結果としては、he realized と the job was going to be との間で「時制の一致」が発生しているが、「前の動詞に合わせて後ろの動詞の時制を変える」などと考える必要はなく、日本語訳の表現に惑わされないよう注意して、それぞれの動詞の時制をきちんと選べばよい。
ということですね!
(たぶんそういうことだと思うのですが、間違っていたらご指摘ください・・・)
3つ以上の動詞を含む複雑な英文の「時制の一致」について、理解がかなり深まりました!
本当にありがとうございました。
「時制の一致」というのは、主節が過去形のときには、従属節も過去になるという一般的なルールです。論理的に考えれば、当たり前のことです。でも、日本語では時制が曖昧なので、日本語に訳してから理解しようとすると、難しく感じるかも知れません。
I know (that) Greg loves apples.
主節 (main clause)
I know.
従属節 (subordinate clause)
Greg loves apples.
以下の文は、それぞれ異なる意味を持っています。
(1)
I know Greg loves apples.
(2)
I knew Greg loved apples.
私が知っていたのは過去のこと。そのため、論理的に、グレッグがりんごを大好きだったことも過去のことになります。これが時制の一致です。
(3)
I knew Greg loved apples when he was little.
私が知っていたのは過去のこと。そのため、論理的に、グレッグがりんごを大好きだったのは過去のことになります。また論理的に、グレッグが小さかったのも過去のことです。時制が一致しています。
(4)
I know Greg loved apples when he was little.
私が知っているのは今のこと。グレッグはりんごが大好きだったのは過去のこと。彼が小さかったのは過去のこと。
これは主節「I know」が現在形です。「know」と 「Greg …」の間に、時制の一致は生まれません。
グレッグの過去のことを、私は今、知っているということで、論理的に何の問題もありません。
ご質問の文は、(4) の文と同じ形です。
この形は日常的によく使います。
I think Eric ate breakfast even though he didn’t feel hungry this morning.
I’m sure Lisa missed the bus because she had left home only a few minutes ago.
weblio 英語の質問箱、に寄せられた回答への返答
回答ありがとうございます。
>i dont think で、「何々と考えてない」という意味で、これは今考えていると捉えられますが、
これは「否定の前倒し」「not の前倒し」などと呼ばれる表現方法で、本質的に後ろを否定したい場合(ここでは realized を否定したい)ときに、I think のところに否定を「前倒し」することで、表現を和らげるなどの効果がある、日本語にはない英語独特のやり方らしいです。
「今考えている」つまり現在だという点は、同意です。
>he realized の時点は今より過去であり、時制の一致は発生していますよ。
どことどこが、どのようになっていることを「時制の一致が発生している」とおっしゃっているのでしょうか?
I dont think と、he realized はそれぞれ現在形、過去形なので「時制は一致していない」ですよね?
>ちなみに、wasはrealizedの過去の時制に引っ張られた感じです。
そこなんです。
前にある he realized に合わせるかのように、後ろにある「厳しいものになる」(現在形)が、the job was going to be と、「過去形」になっているんです。
これが「時制の一致」が起こっている、ということなのでしょうか?
だとしたら、最初の I dont think が現在形であることと合わせて、「時制の一致」発生の条件がいまいち理解できていませんが・・・
そして最初の I think の部分は、「考えている」のは現在ということで、明らかに過去とは別の話なので、後ろの he realized と the job was going to be とは時制の考え方が切り離されて、I dont think と he realized の間、および I dont think と the job was going to be の間には「時制の一致」は起こっていない、ということなのでしょうか?