音声変化(叩き音、リエゾン)について
聞き取れないセンテンスに出会いました。
https://www.youtube.com/watch?v=bXCOI_LQ_0o&t=33s
字幕では"I can't get her out of my head"となっていました。
しかし何回聞いても「ゲラララ マイヘッド」にしか聞こえません。
そういう発音になる理屈はわかるのですが。
"get her" → "get er" → (hが落ち、t+母音だから叩き音になる) → "ゲラr"
"out of"(これは有名。"アウラ"という発音になる)
"ゲラr アウラ" → (r+母音なのでリエゾンする) → "ゲララウラ"
英文から発音への変換は頭の中でできるのですが、発音から英文への変換ができず、何と言っているのか理解できませんでした。
ネイティブの英語話者はこれを聞いたとき瞬時に意味がわかるものなのでしょうか?
また、英語学習者がこれを聞き取れる(意味が分かる)ようにするにはどのように学習していけばよいのでしょうか?
正直、心が折れそうです。
よろしくお願いします。
回答
> ネイティブの英語話者はこれを聞いたとき瞬時に意味がわかるものなのでしょうか?
分かります。特にこの動画では、はっきり発音されているので、まったく問題ありません。小さいときからこの音に馴染んでいます。小学校に入ってから、これを文字で “I can't get her out of my head.” と書けるようになります。
日本で英語を学ぶときは、順序が逆です。まず文字を読むことから始めます。英語を聞くにしても、学校では、日本語に訛った英語がほとんどではないでしょうか。本当の英語を聞いて、聞き取りにくいと感じるのは、当然です。
> 英語学習者がこれを聞き取れる(意味が分かる)ようにするにはどのように学習していけばよいのでしょうか?
ご質問を読んで、発音の基本はご理解なさっていると察します。付け加えるとしたら、日本語のタ行の音は舌先が下を向いて上の前歯に触れているのに対し、英語の子音 /t/ は舌先が上を向いていて、前歯には当たりません。そのため、Flap T (叩き音) になるのは、自然なことです。
私はバイリンガルで、アメリカ英語の発音指導をしています。特にイントネーションとリズム (prosody) の練習を重要視しています。ご質問にお書きになっているような、母音と子音一つ一つの音や、そのバリエーションは、もちろん大切なのですが、それだけでは不十分です。
日本語は、文字の一つ一つを明瞭に発音することを大切にします。すべてではないですが、特に単語レベルでそういうことが多いです。例えば、日本語で「広島」と言うとき、「ヒ」「ロ」「シ」「マ」の一つ一つが、同じ強さで、同じ音程で、同じ長さで、発音されます。
それに対して英語は、抑揚とリズムが大切です。単語レベルでも、高く長く発音する音節 (アクセント / stress) と、低く短く発音する音節があります。例えば、日本語を知らない英語ネイティブが Hiroshima と言うとき、どうしても [hɪroʊʃíːmə] や [hɪróʊʃəmə] になってしまいます。
“I can't get her out of my head.” のような文も同じで、強調したい単語は高く長く、そうでない単語は低く短く発音されます。日本の学習者は、単語の一つ一つを聴こうとして、難しいと感じてしまうようです。英語の intonation (抑揚) と rhythm を身につけることが、とても重要です。それには、英語を何度も聞いて、何度も繰り返し発音して練習することです。
私はそういうレッスンをしています。ご興味がありましたら、kevin@musicolingo.com にメールください。